色々思うところはあるが、ハイレゾに懐疑的な私としては全曲買うのはためらわれるので、とりあえず一曲だけ買ってみた。デビューアルバム「水たまりに映るセカイ」から「約束 〜eternal promise〜」。今月のアルバム2枚では一番聞き込んでる曲。
再生ソフトはFoobar2000。ヘッドホンアンプがFOSTEXのHP-A4、ヘッドホンはAKGのK701。CDから無圧縮でリッピングしたWAV44.1kHzと続けて聞いてみた。
双方確かに違う。ハイレゾの方が子音の再現とかで若干音質が良い。しかし高域の伸びがあるとかは全然感じない。奥行きが違うとか広がりがあるとかも無い。リバーブのかかりかたも同じに聞こえる。しかしハイレゾの方がマスタリングの音量が少しだけ大きい感じなので、そこを合わせなければ比較する意味が無い。
で両方の波形を読み込んでみた。上が96kHz。

ハイレゾの方が大きい音量になっている。こんなのを聞き比べて音が良くなったとか言っちゃいけないけどもう少し見てみる。
3分19秒付近にごく短時間の過大入力があるんだけど、CDはこれがクリップするかしないかの全体レベルになっている。ハイレゾはここで瞬間的にリミッターをかけて全体の音量を引き上げている。これはこれで正解だと思う。単に再エンコードしたのではなくテープのマスターからリマスターしたというのは本当っぽい。ただこの処理は別にハイレゾの必要性は全然ない。
スペクトラムを見てみる。
まずはCD。

だいたい18kHzまで収録されている。一般的なところ。
ハイレゾ。

グラフ上は44kHzあたりまで伸びている。ただ曲の大部分で20kHz以上はおよそ-80dB以下、30kHz以上はほぼ-100dB以下で、超高性能耳の人でも聞こえているかどうかかなり疑わしい。有意な音データとしてはたまに入るチェレスタっぽいチャイム(2分5秒あたりとか)の倍音が22kHzあたりに見られるくらい。あと曲を通じて常に28kHzと32kHzあたりにピークが立っていて、恐らくノイズ。テープ由来かどうか分からんけど。
あと面白いのがハイレゾで曲が終わってフェードアウトしたあたり。

音楽的には無音だけど全域で-100dB以下には下がらない。ここがノイズフロアという事だが、それはつまり再生中でも30kHz以上はノイズに他ならず、20kHz〜30kHzでも音楽成分はノイズフロアから+20dB程度のものという事だ。中低域は+60〜80dBあるので、こんなの犬以外にはマスクされて聞こえまい。
結局、ハイレゾ配信の価値は古めの楽曲を現代の技術で再マスタリングする事にあるんじゃないかと。昔の精度の低いコンプレッサーとか避けられるだけでも意味はあるし曲によっては金を払う価値もある。ただしサンプリングレートやbit数が上がった事にはあまり意味は無いんじゃないか。これ一曲だけで判断するのは非常に乱暴だけど、おおよそ考えていた通りの結果だった。他の曲も見てみたいけど、高いしサイズ大きい(今回Flacで一曲100MB)しなあ。